平成25年11月10日 発達障害講演会 アンケートからの回答 その6

質問6

アスペルガーの子供が不登校や引きこもり状態になってしまった時、親が出来ることは何か?

 

回答

親子の信頼関係を築くことが一番大切です。そして誉めることです。信頼関係がしっかり出来ていれば、乗り越えられるように環境づくりをすることです。子どもが親にして欲しいことは、自分のことをわかって欲しいことです。失敗が多く、誉められることの少ない発達障害児(者)ですが、出来ることを誉めてあげて下さい。二つのことをして、一方は良く出来て、他方が出来なかった時、悪かった方を責めるのではなしに、良く出来た方を誉めてあげて下さい。出来ないことばかり目くじらを立てて叱るのでは、本人はやる気をなくし、次回は両方ともやらなくなってしまいます。発達障害児(者)は純情で素直なので、誉められるとやるようになります。逆に言うと、騙されやすいタイプでもあります。誉める内容は、出来たことでいいです。例えばご飯を食べたら、「食べてくれてありがとう」、今日は良い目をしていたら、「今日は目が素敵だね」、そんな他愛ない内容でいいのです。そんなことから目と目が合わせられること(アイコンタクト)が出来るようになったりします。自己否定されない関係を築くことが大切です。子どもは父親には認めて欲しいという欲求が、母親には優しくして欲しいという欲求があります。

 

学校に行かせない選択は、ストレスは無くなるかもしれませんが、行かせないことで完結はしません。自分をコントロールする方法を身につけておくとやりやすくなります。苦手なことは人並みに、得意なことは伸ばす、出来ることなら、ずば抜けて出来るようにすることが理想です。国語はストーリーはわかっても人の心の機微はわかりません。勉強しておいた方がいい科目は数学と英語です。何故なら両方とも地道な積み重ねがモノをいうからです。この2科目をしっかりやっておけば不登校になっても、勉強はついて行きやすくなります。

 

アスペルガーの人は、自分が困っていることを人に言えません。悩んでいることはあるのですが、それを伝えることはできません。いきなり怒ったり逆上するような時、脳で、てんかん発作のような症状が起こっています。何故それが起こるのか説明することは出来ません。ですので、困っていることを聞き出そうとしても効果はありません。それよりも出来ることを誉めてあげた方がいいです。何かやらせたい時には、それを習慣にして家族のルールにしていれば本人はやります。

 

定型発達の人にはカウンセリングで傾聴してあげると気持ちが楽になりますが、アスペルガーの場合は傾聴しても効果がありません。それで、昔のトラウマや嫌なことを思い出したりして涙を流した時に、眼球運動による行動治療(EMDR)をすると効果があります。この眼球運動による行動治療というのは、目の前に人差し指を置き、急速に目の前で左右に動かして、それを眼だけで追います。この時首は動かしません。(24・60往復を12~30秒で)これを反復しながら、「自分は弱いダメな人間だからあんな目にあった」という否定的な自己認知を打ち消して、「あれは災難だった。自分が悪いから起きたのではない。」という肯定的な自己認知をいだき、それを言葉に出して繰り返します。(星野仁彦著・「気づいて!こどもの心のSOS」より)

 

子供が社会に出られないのは、父親が発達障害とか子供が発達障害だからではなく、空気が読めないことが問題だからです。また社会に出られないのは、失敗するのが嫌だからです。やる前から気持ちが一杯になってしまい、失敗は許されないと考えてしまうので、出来なくなってしまいます。初めて仕事体験をする時には、発達障害について理解があり、面倒見が良くて失敗経験をさせないような配慮をしてくれる職場が理想です。仮に失敗した時は、何でそれが出来ないのかフォローしてあげる必要があります。

 

ということが、定例会で話し合われました。また、会員の方の中から、

 

告知されないで失敗体験を続けていくとどうしても自分が悪いからと自己否定的に考えてしまいます。でも告知されると、今までの失敗体験は自分のせいではなく病気のせいだったんだとホッとするような所があります。告知を受けて障害を受け入れた方が楽になれるのではないか、と私は思っています。

 

という見解もありました。不登校という氷山の一角ばかりをとらえず、根本にあるアスペルガーへの自己理解を進めていくというのも、不登校の解決につながるのかもしれません。

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